研究活動

著書

著者から読者へ

 9月中旬になっても昼間は盛夏のような暑さが続いています。
いかがお過ごしでしょうか。この夏わたしは、お送りするこの新著の校正を8月初めに終え、小熊英二や寺田光雄、恒木健太郎、中野敏男などの戦後啓蒙社会科学についての研究書を読んだり(寺田さんの『生活者と社会科学』新泉社については、関大の経済論集に書評を書きました)、グラムシの獄中ノートの国家論に関連する研究書に目を通したりして、いつもよりもゆったりと過ごすことができました。しかし、9月になって夏の疲れがどっと出ています。
 さて、17年ぶりの本となる『新自由主義・国家・フレキシキュリティの最前線』の構成を考え、足りない箇所を加筆し、「はしがき」で現代危機についてまとめ、「あとがき」でこの17年間を振り返るという作業をしながら、自分のつたない研究生活が名古屋大学大学院時代の平田清明先生の学恩や平田ゼミから育った研究者との長年の交流に、また山田鋭夫氏をリーダーとして日本に定着したレギュラシオン学派の方々との交流に実に多くを負っていることを自覚しました。あとがきでは家族にも触れています。越し方を思い感謝するという心境は、十分に年を取ったことの証拠でしょうか。
 本書は、最初『21世紀の社会経済と国家』というタイトルにするつもりでしたが、『新自由主義・グローバル危機・福祉国家の再編――21世紀の政治経済学』、『新自由主義・国家の変容・「社会的なもの」の危機――21世紀資本主義の対立軸』などを経て、結局現行のタイトルに落ち着きました。資本主義国家の原理的考察(1部)も、グローバル化と現代国家論(2部)も、新自由主義へのオルタナティブとしてのフレキシキュリティ論(3部)も、内容的にはまだ完成したものではありません。最後のところで、労働市場(と労働)の将来や選択可能な社会についてもう少し展開したいと思って準備していましたが、刊行予定からみて時間がありませんでした。国家論についても続編がありうる、と思っていただければうれしいです。
 まだまだ酷暑が続いています。お暇な折にご笑覧いただければ幸いです。